SHINZOUだ。
その「ステータス」は、ただの「借金」です。
タンスの奥に眠っている「ゴルフ会員権」の証書、最後に見たのはいつだ? かつて数千万円した憧れの名門コース。だが今、その価値は暴落どころか「0円」でも買い手がつかない。
持っているだけで毎年、容赦なく引き落とされる数万円の年会費。役職定年で給料が3割下がったお前の口座から、今年も現金が消えていく。これは「資産」ではない。「負債」だ。今日は、そんな「趣味の終活」に失敗した一人の元部長の末路を見てもらおう。
第1章: バブルの幻影「150万なら安い」と飛びついた50歳の誤算
高田健二、54歳。大手メーカーの関連子会社勤務。年収は役職定年で850万円から600万円にダウン。妻はパート、娘は私立理系の大学生。典型的な「教育費ピーク」の団塊ジュニア世代だ。
高田には、心の拠り所があった。7年前に購入した、関東近郊の名門「カントリークラブ」の会員権だ。
「部長、週末またゴルフですか? いいですねえ、メンバーさんは」
部下からのその言葉が、高田の自尊心をくすぐる。バブル期には1000万円を超えていた会員権が、アベノミクス後の相場で150万円まで下がっていた。「これは底値だ。退職後はここで悠々自適に過ごすんだ」。そう信じて疑わなかった。
週末の朝、使い込んだ革のキャディバッグを愛車(10年落ちのクラウン)に積み込む時の、あの油と革の混ざった匂い。「ビジター」としてペコペコ頭を下げるのではなく、「メンバー様」としてフロントでサイン一つでロッカーキーを受け取る優越感。
「俺はまだ、終わっちゃいない」
スコアカードにペンを走らせる音が、心地よく響く。だが、高田は気づいていなかった。その「優越感」の維持費が、静かに、しかし確実に家計を蝕んでいることに。妻のパート代が、娘の実験実習費に消えている現実から、彼は目を背け続けていた。
第2章: 「年会費値上げ」の通知が"死神の手紙"に見える日
綻びは、一通の封書から始まった。差出人はゴルフ場理事会。「重要なお知らせ」という赤字のスタンプが押されている。
「またコンペの案内か?」
軽い気持ちで封を切った高田の指が止まった。
『諸物価高騰、およびコース維持管理費の上昇に伴い、次年度より年会費を改定いたします。現行:55,000円 → 改定後:110,000円』
倍増だ。一気に10万円の大台に乗った。
「ふざけるな...!」
思わず声が出た。役職定年で小遣いは月3万円に減らされている。そこへ来て、乗るだけで一度も動かしていない愛車の車検、娘の後期授業料の振込用紙、そしてこの通知。
「あなた、これ何?」
背後から妻の声。冷たい。氷点下の響きだ。
「いや、ちょっとゴルフ場の会費が上がるらしくてな...」
「11万円? そんなお金、どこにあるの? 今年、何回行ったの?」
「...2回だ」
「1回5万5千円の入場料ね。馬鹿馬鹿しい。今すぐ辞めてよ」
妻の足音がドスドスと遠ざかる。リビングに残された高田は、封筒を握りしめた。紙がクシャリと潰れる乾いた音が、静寂の部屋に響く。
「辞める...? いや、もったいない。150万もしたんだぞ。今売ったら損だ...」
サンクコスト(埋没費用)の呪縛。この判断の遅れが、致命傷になるとは知らずに。
翌日の昼休み。高田は会社の非常階段で、会員権業者に電話をかけた。手にはスマホ、額には脂汗が滲む。
「もしもし、会員権を売りたいんですが。〇〇カントリークラブです」
「あー、〇〇さんですね。少々お待ちを...」
保留音が永遠に感じられる。非常階段の鉄の匂いが鼻につく。
「お待たせしました。高田さん、単刀直入に申し上げます」
業者の声は、事務的で、残酷なほど冷静だった。
「そのコース、現在『買い手なし』です」
「は? いや、150万で買ったんですよ? 半値でも、いや10万でもいいんです」
「値段の問題じゃないんです。0円でも誰も欲しがらないんです」
高田の喉がヒュッと鳴った。
「名義書換料が100万円かかるコースでしょう? タダで会員権をもらっても、入会するだけで100万かかる。今の若い人はそんな金出しませんよ。売り注文が300件溜まってますが、買いはゼロです」
「じゃあ...ゴルフ場に返します。退会します」
「それも無理でしょうね。そのコース、預託金の返還は凍結中です。退会しても金は戻ってきません。むしろ...」
「むしろ?」
「場合によっては『処分費』を請求されるかもしれませんよ」
プツン。通話が切れた。
スマホの画面が暗くなる。そこには、老け込んだ自分の顔が映っていた。口の中が苦い。胃液の味がした。
かつてのステータスシンボルは、今やただの「産業廃棄物」と化していたのだ。
SHINZOUの深掘り分析
いいか、これが「趣味の終活」を怠った者の末路だ。
ゴルフ会員権市場は今、完全に崩壊している。帝国データバンクの調査を見ろ。ゴルフ場経営企業の倒産は減ったように見えるが、それは「法的整理」を諦めて「自主廃業」や「外資への叩き売り」を選んでいるからに過ぎない。
団塊の世代が75歳を超え、ゴルフを引退する。市場に大量の「売り」が出る。だが、それを買う若者はいない。需給バランスは完全に崩れている。
「いつか値上がりする」なんて幻想だ。
その会員権は、お前の老後を腐らせるガン細胞だ。お前が死んだ後、それは「負の遺産」として子供に残る。年会費の滞納があれば、相続放棄すら面倒なことになる。
今すぐ損切りしろ。0円譲渡でも、年会費10万円が消えるなら「勝ち」と思え。プライドと一緒に、その会員権を捨てろ。
▼高田の同僚も地獄を見ていた...
【地獄】早期退職1万人時代の末路。52歳・元大手部長が「黒字リストラ」に応募した結果…❓ よくある質問 (FAQ)
👤 この記事を書いた人
SHINZOU(しんぞう)
不動産業・便利業ブロガー。
投資歴35年。金融・不動産の国家資格に加え、建物(電気・給水)から庭、船舶まで知り尽くした「暮らしと資産のスペシャリスト」として、きれいごと抜きの現実を発信する。
※本記事は、実際の事例や掲示板の投稿を参考にしたケーススタディ(フィクション)です。
※投資・経営判断は個人の責任において行ってください。

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